障がい福祉事業をスタートさせるための大きな関門である「指定申請」。膨大な書類を準備し、行政の厳しい審査をクリアしなければなりません。
しかし、実は「書類を作る前」の整理段階で、その後の進行がスムーズになるか、あるいは行き詰まってしまうかが決まると言っても過言ではありません。
本記事では、指定申請を提出する前に、事業者様が必ず整理しておきたい3つの重要ポイントをまとめました。
※ご確認事項 本記事で紹介する事例は、あくまで「よくあるケース」や「モデルケース」を想定したものであり、個別の事案や自治体の判断によって運用が異なる場合があることをご了承ください。
ポイント1:物件の「適格性」を確定させる
物件が決まらなければ、指定申請は一歩も前に進みません。しかし、単に「場所が良いから」という理由だけで決めてしまうのは非常に危険です。
建築基準法と消防法のハードル
障がい福祉サービスの種類によっては、建物の用途を「福祉施設」として扱う必要があり、建築基準法上の「用途変更」が必要になる場合があります。
- 想定事例: 賃貸契約を済ませた後に、用途変更の手続きに数百万円の費用と数ヶ月の期間が必要だと判明し、計画が頓挫しかけたケース。
また、消防法に基づく「自動火災報知設備」や「誘導灯」などの設置基準も一般のオフィスより厳しいため、事前に物件の図面を持って専門家や消防署へ相談に行くことが不可欠です。
ポイント2:人員配置の「実効性」を検証する
指定を受けるためには、サービスごとに定められた「人員配置基準」を完全に満たす必要があります。
資格と実務経験の裏付け
「サビ管(サービス管理責任者)」や「児発管(児童発達支援管理責任者)」などの有資格者はもちろんですが、重要なのはその**「実務経験」の証明**です。
- よくあるケース: 採用予定者が「以前の職場で経験がある」と言っていても、自治体が求める書式の証明書が発行できなかったり、必要な年数に数日間足りなかったりして、受理されないことがあります。
履歴書の写しだけでなく、実務経験証明書の下書きなどを早めに作成し、要件を満たしているか客観的に確認しておく必要があります。
ポイント3:収支計画と「運転資金」の確保
指定申請そのものに費用はかかりませんが、事業を継続するためには綿密な資金計画が必要です。
給付費の入金サイクルを知る
障がい福祉事業の大きな特徴は、サービスを提供してから報酬(自立支援給付費)が入金されるまでに約2ヶ月のタイムラグがあることです。
- モデルケース: 4月に開所し、最初の売上が入金されるのは6月下旬。その間のスタッフの給与や家賃は、すべて自己資金や融資で賄わなければなりません。
指定申請の書類を作成する前に、「開所から3〜4ヶ月分を支える運転資金」が確実に確保できているかを整理しておくことが、経営者としての安心感に繋がります。
まとめ:早めの整理が「安心」を生む
指定申請は、単なる事務手続きではありません。今回挙げた「物件」「人員」「資金」を整理することは、そのまま事業の土台を固める作業でもあります。
名古屋市での申請は、自治体独自のルールや事前相談の予約など、特有の段取りも多く存在します。一人で抱え込まず、早い段階で専門家に相談することで、書類の差し戻しやスケジュールの大幅な遅れを防ぐことができます。
着実な準備を通じて、利用者様に喜ばれる素晴らしい事業所を形にしていきましょう。
免責事項・注記
- 本記事の内容は、一般的な制度解説を目的としたものであり、特定の申請結果を保証するものではありません。
- 記事内の事例はすべて想定事例(モデルケース)であり、個別の状況によって行政の判断は異なります。
- 実際の申請にあたっては、必ず最新の法令や自治体(名古屋市等)の「指定申請の手引き」を確認し、必要に応じて管轄部署や専門家へ個別にご相談ください。
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