名古屋市で障がい福祉サービスの事業所開設を検討される際、何から手をつければよいのか、どのような基準をクリアすべきか不安に感じる方も多いのではないでしょうか。福祉事業は社会貢献性が高い一方で、公費(給付費)で運営されるため、非常に厳格なルールに基づいた運営が求められます。
本記事では、名古屋市で障がい福祉事業をスタートさせるために、最低限押さえておきたい基本事項を整理しました。検討の初期段階で全体像を把握することで、その後の準備をよりスムーズに進める一助となれば幸いです。
※ご確認事項 本記事の内容は、一般的なモデルケースを想定した解説であり、個別の申請にあたっては自治体の最新の判断を確認する必要があることをご了承ください。
名古屋市における指定申請の全体像
障がい福祉サービス(就労継続支援、共同生活援助、児童発達支援など)を運営するには、行政から「指定」を受ける必要があります。名古屋市内で事業を行う場合は、内容に応じて名古屋市の「子ども青少年局」や「健康福祉局」が管轄窓口となります。
指定を受けるためには、大きく分けて**「3つの基準」**をすべて満たす必要があります。
① 人員基準(誰が働くか)
サービスごとに必要な職種と人数が決められています。特に対策が必要なのが「キーマン」の確保です。
- サビ管・児発管の配置: サービス管理責任者(サビ管)や児童発達支援管理責任者(児発管)といった、実務経験と研修修了が必須となる職種を確保できるかが最大の焦点です。
- 想定事例: 採用予定者の実務経験証明書が、名古屋市の定める要件に数ヶ月足りず、急遽別の候補者を探すことになったというケース。
② 設備基準(どこでやるか)
事業所の広さや設備についても細かなルールがあります。
- スペースの確保: 指導訓練室、相談室、静養室など、サービスごとに必要な室名と面積が決まっています。
- バリアフリーの配慮: 名古屋市の条例等により、車椅子での利用を想定した構造や有効幅員が求められる場合もあります。
③ 運営基準(どう運営するか)
適切な事業運営のためのルール作りです。
- 運営規定の作成
- 事故発生時の対応体制
- 会計の区分(福祉事業と他の事業を分ける)
- 個人情報の保護方針
物件選定における「福祉特有」の注意点
「駅が近い」「家賃が手頃」といった一般的な不動産選定の基準に加え、福祉事業では法的なハードルが存在します。
建築基準法と消防法の確認
最も注意が必要なのは、その建物が福祉事業所として使用できるかどうかです。
- 用途変更の手続き: 一般的な事務所以外の用途(特殊建築物)として扱う場合、一定の面積を超えると建築確認(用途変更)の手続きが必要になり、多額の改修費用や期間がかかることがあります。
- 消防設備の設置義務: 自動火災報知設備やスプリンクラー、誘導灯の設置など、消防署による厳しい確認が行われます。
名古屋市独自の「手引き」の確認
名古屋市ではサービスごとに詳細な「指定申請の手引き」を公開しています。図面の書き方や、事前相談の予約時期など、名古屋市独自の運用ルールを事前に読み込んでおくことが、スムーズな準備の鍵となります。
法人格の取得
障がい福祉サービスは、個人事業主で行うことはできません。必ず「株式会社」「合同会社」「一般社団法人」「NPO法人」などの法人格が必要です。
- 定款の目的欄: 法人の定款に、これから行う事業内容(例:障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく障害福祉サービス事業)が正しく記載されている必要があります。
スムーズに準備を進めるための3ステップ
- 事業コンセプトの明確化 「どの地域で」「どのような特性を持つ方に」「どのような支援を届けたいか」を具体化します。
- 資金計画の策定 指定を受けるまでの準備期間(数ヶ月〜半年程度)は、売上が発生しません。家賃や人件費、改修費などの初期費用を余裕を持って見積もりましょう。
- 早い段階での専門家への相談 名古屋市の基準は細かく、判断に迷う場面が多くあります。物件を契約する前や、法人を設立する前の段階で、行政の窓口や行政書士に相談することをお勧めします。
まとめ
障がい福祉事業は、利用者様の人生を支え、地域社会を豊かにする非常にやりがいのある事業です。その一方で、指定申請という「最初のハードル」は決して低くありません。
基本事項を一つずつ丁寧に確認し、誠実な準備を積み重ねていくことが、利用者様やそのご家族からの信頼に繋がります。名古屋市で新たな一歩を踏み出そうとしている皆様を、当事務所も心から応援しております。
免責事項・注記
- 本記事は、一般的な制度の概要を解説したものであり、特定の申請結果を保証するものではありません。
- 記載された事例は想定モデルであり、実際の運用は自治体(名古屋市)の判断や、最新の法令改正によって異なる場合があります。
- 具体的な検討にあたっては、必ず最新の「指定申請の手引き」を確認し、管轄部署や専門家へ個別にご相談ください。
行政書士わたなべオフィス 名古屋市を中心に障がい福祉サービスの指定申請・運営をサポートしています。 ▶ お問い合わせ・ご相談はこちら