
【名古屋市で障がい福祉事業を始める皆さまへ】
今回は、障がい福祉事業の開設準備の中でも、見落とされがちでありながら重大な影響を与える「賃貸契約書の不備」に焦点を当ててお話しいたします。
◆ なぜ「賃貸契約書」が重要なのか
名古屋市では、障がい福祉サービス(就労継続支援や共同生活援助など)を始めようとされる方が年々増えています。しかし、その第一歩でつまずく方が少なくありません。その原因のひとつが、行政の指定基準を満たしていない賃貸契約書の存在です。
一見、物件が見つかり契約まで進めば順調に見えるかもしれません。しかし、契約書の中身が不適切であると、申請が通らず、最悪の場合再契約や物件変更を余儀なくされることもあります。このような事態は、開業予定の遅延だけでなく、金銭面や人材面にも大きな損失をもたらします。
◆ 名古屋市の行政審査で見られるポイント
名古屋市では、行政の審査が非常に厳密です。賃貸契約書一つとっても、以下のような細かいポイントまでチェックされます:
・使用目的:住居用ではなく「障がい福祉事業」であることの明記
・転貸・用途変更の可否
・契約期間の安定性(1年未満や自動解約などは避ける)
・バリアフリー改修や内装工事の可否と事前合意
・添付図面や付帯書類の整備
◆ 不動産オーナーとの調整が難航することも
不動産オーナーが福祉事業に詳しいとは限らず、「施設用途はNG」「改修NG」「転貸NG」など、誤解や先入観によって修正に応じてもらえないこともあります。
だからこそ、物件の内見や契約段階から「この内容で行政に通るかどうか」を意識して動くことが不可欠です。理想は、仮契約の段階で行政書士が契約内容を確認し、必要に応じてオーナーとの調整に入ることです。
◆ 契約書チェックで見るべき主なポイント
- 使用目的は「障がい福祉事業」など明確に表記されているか
- 用途変更・転貸・改修に関する許可があるか
- 契約期間が安定しており、更新条件も明確か
- 改修工事に関する合意が文書で明記されているか
- 図面や仕様書など、申請に必要な添付書類が整っているか
◆ 周辺自治体の傾向について
名古屋市以外でも、春日井市、日進市、東海市など周辺自治体でも同様の傾向があります。行政の様式や用語は若干異なるものの、求められる実質的な基準は共通しています。
◆ よくある誤解と注意点
「契約書なんて、借りるだけだから後で見ればいい」
「とりあえず契約してから考えよう」
こうしたお気持ち、理解できます。しかし、福祉事業の世界では、契約書こそが“土台”です。行政に認められるか、地域に根差せるか、安定して運営できるか——そのすべてが、この一枚にかかっていると言っても過言ではありません。
◆ 行政書士としてできること
私の事務所では、物件探しの段階から「契約書が行政に通るか」の視点でチェックを行っています。また、オーナー様との調整が必要な場合も、事業者様の想いを丁寧に代弁し、合意形成のお手伝いをしております。
◆ おわりに
障がい福祉事業は、人の生活を支える大切な仕事です。だからこそ、開設の準備も一つひとつ丁寧に、安心して進めていただきたいと願っています。
物件が決まりそうなとき、あるいはすでに契約を控えているとき、「この内容で大丈夫?」と少しでも不安を感じたら、どうぞお気軽にご相談くださいませ。
行政書士わたなべオフィス
代表 渡辺登美恵(愛知県行政書士会所属)