はじめに:なぜ「人員基準」を誤解すると開業が遅れるのか
名古屋市で障がい福祉事業を始めたいと思っても、最初の大きな壁になるのが「人員基準」です。これは、施設を運営するうえで配置しなければならない職種・人数・勤務時間などを定めたルールのこと。ひとつでも条件を満たさないと、申請が受理されなかったり、開業が何か月も遅れてしまうことがあります。
実際、ある事業者が「人員基準」を誤って解釈したことで、申請が差し戻され、予定より2か月以上も開業が延びてしまいました。この記事では、そのような事例をもとに、「どんな点に注意すればよいのか」「どのように準備を進めれば安心なのか」を、行政書士の立場からやさしく解説します。
これから障がい福祉事業を開業しようと考えている方が、同じ失敗を避け、スムーズにスタートできるようになるための内容です。
名古屋市での「人員基準」とは?
障がい福祉事業を行う際は、どの市町村でも「人員基準」を満たすことが求められます。これは国(厚生労働省)の指針をもとに、名古屋市が地域の実情に合わせて運用しているものです。
たとえば、名古屋市では次のような点がチェックされます:
- 常勤・非常勤の勤務時間(週40時間換算)
- 有資格者の配置(介護福祉士・児童指導員など)
- 管理者やサービス管理責任者の兼務の可否
- 実務経験の内容と年数
- 勤務時間と営業時間の整合性
書類の数字が合っていても、勤務実態や資格証明が伴っていない場合、審査で不備と判断されることがあります。つまり「人員基準」は単なる形式ではなく、実際にその体制で運営できるかどうかを確認するための重要な項目です。
実際にあった事例:人員基準を誤解して開業が遅れたケース
名古屋市中区で放課後等デイサービスの開業を目指していたB社の例を紹介します。
B社は、児童指導員3名・管理者1名・児童発達支援管理責任者1名を配置する計画を立て、申請書類も一通りそろえていました。ところが、行政書士による事前チェックの段階で問題が見つかります。
その一つが「非常勤スタッフの勤務時間」でした。B社は、1日4時間・週3日勤務の非常勤職員を1名としてカウントしていましたが、名古屋市ではこれを常勤換算0.3名とみなす運用がなされています。つまり、人数はそろっていても、実際の勤務時間が足りず、基準を満たしていなかったのです。
また、児童発達支援管理責任者として予定していた職員が、実務経験要件(障がい児支援業務5年以上)を満たしていないことも判明しました。その結果、申請の再提出が必要となり、開業は2か月先延ばしに。物件契約や人件費などのコストも増え、大きな損失となってしまいました。
このケースからわかるのは、「人数だけを合わせても、人員基準はクリアできない」ということです。資格、勤務時間、経験など、複数の要素を正確に組み合わせる必要があります。
よくある誤解と注意点
1. 「人数が足りていればOK」と思っている
→ 実際には、勤務時間の合計で常勤換算が必要です。週20時間の非常勤2名は1名分にはなりません。
2. 「福祉業界の経験なら何でも実務経験になる」と考えている
→ 名古屋市では、障がい児(者)への直接支援が伴う業務のみを「実務経験」としてカウントします。間接業務や管理業務は含まれない場合があります。
3. 「兼務は自由にできる」と思っている
→ 管理者が支援員を兼ねる場合など、勤務時間の重複や責任範囲に制限があります。名古屋市では兼務の可否を厳密に確認しています。
名古屋市の審査でよく見られるポイント
名古屋市の障がい福祉事業指定申請では、次の3点が特に重視されます。
- 整合性:勤務予定表・人員配置表・契約書・資格証の内容が一致しているか。
- 実現性:実際にその勤務体制で運営可能か(シフト表と事業時間の整合)。
- 信頼性:申請者が制度を理解し、誠実に対応しているかどうか。
また、書類審査に加えて「現地確認」や「面談」で質問を受けることもあります。ここで矛盾や説明不足があると、再審査になることもあります。
行政書士から見た「人員基準」チェックのコツ
行政書士として多くの申請をサポートしてきた経験から言えるのは、「人員基準」を書類上の数字だけで判断しないことが何より大切だということです。以下の手順で確認しておくと安心です。
- 各職員の資格証・雇用契約書を早めにそろえる
- 勤務時間を1週間単位で整理し、常勤換算を計算する
- 勤務予定表を作成し、営業時間との整合をチェック
- 名古屋市の担当課に事前相談を行い、認識のずれを防ぐ
この事前確認を怠ると、開業直前になって申請が止まるケースが少なくありません。とくに「非常勤スタッフの勤務時間」と「資格の実務経験証明」は、最も多い指摘ポイントです。
よくある質問(FAQ)
Q1:非常勤の勤務時間はどう計算するの?
A:週40時間勤務が1.0名として換算されます。20時間なら0.5名、10時間なら0.25名です。複数の非常勤で1名分を構成することも可能ですが、勤務時間が事業時間と重なっている必要があります。
Q2:資格証がない職員でもカウントできる?
A:資格証の写し提出が必須です。申請時に提出できない場合は「申請不可」となります。
Q3:実務経験が足りない場合は?
A:他の職員で補うか、資格要件を満たす職員を採用する必要があります。早めの確認が重要です。
「人員基準」を守ることは、信頼を築くこと
名古屋市での障がい福祉事業は、制度的にも運営的にも「人」が中心です。人員基準を正しく整えることは、行政からの信頼を得るだけでなく、利用者やそのご家族の安心にもつながります。
基準を満たした体制で運営することで:
- 職員の負担が軽減され、定着率が上がる
- 利用者からの満足度が向上する
- 行政監査にも安心して対応できる
- 将来的に加算や事業拡大のチャンスが広がる
人員基準は「守るべき義務」であると同時に、「安定した経営を支える戦略」でもあります。
周辺自治体にも通用する「名古屋モデル」
名古屋市で定められた人員基準の考え方は、尾張旭市・春日井市・北名古屋市など周辺地域でもほぼ共通です。名古屋市でしっかりとした基準理解を身につけておけば、他の地域での事業展開にもスムーズに対応できます。
とくに名古屋市は運用が厳格なため、ここでの準備を基準にすれば、どの地域でも通用する「安心の運営体制」を築くことができます。
まとめ:まずは正確な情報と専門家のサポートを
障がい福祉事業の開業は、社会的にも意義のある素晴らしい挑戦です。しかし、最初の段階で「人員基準」を誤解してしまうと、開業の遅れや追加コストなど、思わぬトラブルに発展してしまうことがあります。
名古屋市での開業を考えている方は、「早めの準備」「正確な確認」「専門家への相談」を意識して進めてみてください。行政書士は、こうした複雑な基準を整理し、事業者様の計画を具体的な形にするお手伝いをいたします。
【無料相談のご案内】
行政書士わたなべオフィスでは、名古屋市および近隣エリアの障がい福祉事業申請を多数サポートしております。
初回相談は無料です。書類の整え方や人員体制の確認など、開業準備の段階からご相談いただけます。
名古屋での福祉事業立ち上げを、私たちと一緒に安心して進めていきましょう。