福祉の分野で「自分にできることを形にしたい」「地域の誰かの力になりたい」と思い立ち、障がい福祉サービスの立ち上げを目指される方が増えてきました。その一方で、「個人でも始められますか?」「法人でなければいけないのですか?」というご質問もよくいただきます。
結論から申し上げますと、障がい福祉サービスを提供するためには、法人であることが制度上必須となります。これはご自身の想いや志とは関係なく、制度の土台として定められている条件です。
法人格が求められる理由とは?
障がい福祉サービスは、「障害者総合支援法」や「児童福祉法」に基づいて提供される公的サービスです。そのため、サービスを提供する事業者は、都道府県や政令指定都市などから「指定障害福祉サービス事業者」としての指定を受ける必要があります。
その指定要件の中に、明確に「法人であること」が規定されています。つまり、個人事業や任意団体では申請そのものができません。熱意や実務経験がどれだけあっても、制度上の入り口に立つには法人格が不可欠なのです。
法人格にはいくつか種類があります:
- 株式会社
- 合同会社
- 特定非営利活動法人(NPO法人)
- 一般社団法人 など
どの形態が適しているかは、事業の目的や運営の方針によって異なります。迷われる場合は、将来の展望を含めて検討されるとよいでしょう。
「小規模なら個人でいいのでは?」という誤解
少人数での訪問型サービスや、いわゆる「個人宅での支援」のような形を想定される方から、「このくらいの規模なら個人で始められるのでは?」というご相談をいただくこともあります。
しかし、**たとえスタッフが1人、利用者が1人でも、制度上は法人でなければいけません。**また、法人でないと、自治体への事前相談の段階で門前払いとなる場合すらあります。
法人化だけでは不十分──事業開始には多くの準備が必要です
「法人登記をしたからすぐ開業できる」というわけではありません。実際にサービス提供を始めるためには、以下のような手続きや準備が必要です:
- 指定申請書類の作成・提出(事業計画書・体制整備に関する書類など)
- 職員配置基準の充足(資格保有者や必要人数の確保)
- 施設基準の確認(広さ、バリアフリー、設備など)
- 自治体への事前相談、立入検査対応
これらはすべて、「形式が整っていればよい」というものではなく、現場と書類が一致していることが大前提となります。
専門職による支援の重要性
制度は複雑で、初めて取り組む方にとっては不安な点も多いかと思います。そこで、行政書士などの専門家が以下のようなサポートを行っております:
- 法人設立に関する手続き全般(定款作成)
- 指定申請書類の作成支援(記載内容の確認・添削)
- 労務体制の整備(就業規則・雇用契約書など)
- 開業後の支援(加算申請や実地指導への備え)
特に初めて福祉事業に関わる方にとっては、書類作成ひとつ取っても専門知識が必要です。「最初から専門家に任せていればよかった」というお声も少なくありません。
最後に──「制度に合ったスタート」が成功への第一歩
障がい福祉サービスの提供は、熱意や人柄だけでなく、制度を正しく理解した上での準備が求められます。法人化はその入り口に過ぎませんが、最初の一歩を間違えないことが、その後の運営の安定につながります。
もし「自分にもできるのだろうか」「どこから始めればいいのか分からない」とお悩みであれば、どうぞお気軽にご相談ください。行政書士として、ご不安な気持ちに寄り添いながら、制度の中で夢を形にするお手伝いをさせていただきます。